ディスレクシア(Dyslexia)とは、どのようなものでしょうか。
国際ディスレクシア協会による定義は、
「言語の音韻的要素の障害によるものである」というものですが、
他の専門書では、つぎのようにも説明されています。

「ディスレクシアとは、知的に問題はないものの読み書きの能力に著しい困難を持つ症状を言います。
充分な教育の機会があり、視覚・聴覚の器官の異常が無いにも関わらず症状が現れた場合に称します。」

視覚の問題に長年かかわっている私からすると、
この説明には少し足りないところがあるように思います。

「視覚・聴覚の器官の異常が無いにも関わらず症状が現れた場合」

の部分は、以下のように加筆・修正するとディスレクシアの説明としてより正しくなります。

「視覚・聴覚の器官の異常がなく、屈折異常や両眼視が適切に矯正されているのにも関わらず、症状が現れた場合」

つまり、視覚器官の異常はなくとも、屈折異常や両眼視が適正に矯正されていなかったり、
未矯正があるときに、視覚器官の異常と同程度の機能障害が生じる場合があるということです。

具体例としては、遠視や強度乱視が矯正されていないケースや、
不同視が放置されているケース、斜位が放置されているケースなどがあります。

視覚情報の入力がむずかしい状態ですと、
視機能、視覚認知、目と手の協応などに影響をあたえることで、
読みの困難、書字の困難が生じてしまい、
結果として、ディスクレシアだと診断される確率が高くなります。
しかし、これらは適正な矯正によって、改善する可能性があります。

したがって、ディスクレシアであると診断するためには、視覚器官の異常の有無だけではなく、
「屈折異常を含む視覚機能が適正に矯正されたにも関わらず」読み書きが困難であるかどうかに注意すべきでしょう。

屈折異常を含む視覚機能を適正に矯正することなく、ディスクレシアであると診断され、
何の処置も施されないままの児童が少なからずいるものと考えられますが、
屈折異常や視覚機能の矯正により、読み書きの能力が向上し、
ディスクレシアを改善・返上できる余地が残されていると私は考えます。

ディスクレシアだからと諦める前に、精確な屈折検査を含む視覚機能検査・視覚認知検査を受けていただきたいと切に思います。